カレイディスト・ニューズレター 2026年3月号
 -前編「ダイバーシティが導く人材育成とカルチャー変革」-

人的資本経営が求められる今、共に組織の未来を創るべく多様な人材が活躍できる環境をつくることは経営アジェンダそのもの。
3月と4月のニューズレターでは、『インクルージョンのその先へ - 組織が変わるヒント』と題して、株式会社ポーラの前代表取締役社長・及川美紀さんとカレイディストのメンバーとの対談を2回にわたりお届けし、DEIをどう組織の成長につなげるのか、そのヒントを探っていきます。

  ◇3月号 「前編:ダイバーシティが導く人材育成とカルチャー変革」
  ◇4月号 「後編:DEIは未来に企業価値向上にどうつながるか」

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Q:カレイディストは、DEIは単に「女性活躍」だけでなく、「女性をはじめ誰もが活躍できる組織」にアップデートしていくことだと思っています。及川さんのご経験ではいかがでしょうか。

前職のポーラでは、男女比はほぼ半々で、制度も整っていて働きやすい環境でした。
それでも、管理職になると女性比率が一気に2割まで落ちる。
「なぜだろう」と思って見渡すと、優秀な女性はたくさんいるのに、
管理職になっているのは“スーパーウーマン”のような一握りだけなんです。
一方で男性は、いわゆる“普通の人”が普通に頑張って管理職になっていく。
そもそも女性は推薦される人数が圧倒的に少ないという事実。
それ以上に「推薦されなかったら辞めてしまう女性が多い」ことの方が問題でした。
男性は何度もチャレンジするけれど、女性は“選ばれた人だけ”。
しかも、会社側の「配慮」が裏目に出て、
「子どもがいるから望んでいないだろう」と勝手に判断されてしまう。
でも実際には、スーパーウーマンじゃなくてもポテンシャルのある女性はたくさんいるんです。
昇格試験を受けると、視野が広がり、「課長として何をするのか」「5年後の組織をどうつくるのか」
を考えるようになる。
これは本人の成長にも、会社の未来にも大きなプラスです。
だからこそ、推薦されないまま埋もれてしまうのは、会社にとっても大きな機会損失だと感じました。
そこで、推薦の仕組みを変更して、
一定の評価ポイントを重ねた人は男女問わず、必ずアセスメントにでて、
翌年の管理職受験を本人に決めてもらう”という方針に変えました。
よほどの理由がない限り、まずは挑戦してもらう。
すると、男性だから、女性だからというバイアスがなくなり、
昇格試験のアセスメントを受けること自体が“当たり前”になっていったんです。
結果として、女性管理職は40%弱まで増え、部長や役員も着実に増えていきました。
これは単に女性活躍の話ではなく、
「この集団が未来に向かってスキルアップしていないのはもったいない」という視点で、
会社全体の人材育成を見直したことが大きかったと思います。

Q:我々も日頃から組織の変革やイノベーションを生むには、社員の能動的な挑戦が欠かせないと考えていますが、一人ひとりの主体性や個性の発揮を、組織としてどう引き出していくべきだとお考えでしょうか?

女性の“エリート探し”だけをしていたら、確かにサクセッションは増えます。
でも、ライフステージの影響で潜在能力を発揮できていない“金の卵”もたくさんいる。
長年くすぶっていた人にも火がついて、全員が燃えた方が、会社としては絶対にいいんです。
結果として管理職が増えるのは良いことですが、何より大事なのは
「一人ひとりが、自分は何をしたくてこの会社にいるのか」を思い出すこと だと思っています。
「部長が言うからやる」のではなく、自分が改革の主体者になるかどうかで、
行動の質はまったく変わります。
私は “I will” という言葉をよく使うのですが、
「私は何を変えたいのか」「何年でどんな変革を起こしたいのか」から考えると、
行動がまったく変わるんです。
仮説構築とバックキャストで考えられるようになる。
その「やりたい」がイノベーションの源泉になるんです。
上司が「それをやると会社にどんな変化が起きると思う?」と問いかけるだけで、
小さな改革が連鎖していく。I will の連鎖 が起きると、組織は本当に動き始めます。
結局のところ、“自分の思い”を言っていい風通しの良さをつくること、
”思いを持ったプロフェッショナルを増やすこと”、これが肝だと思っています。

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Q:我々が顧客と接する中でも、組織の成長には社員が意味のある議論ができるカルチャーに課題を感じる企業が多いように思うのですが、及川さんのご経験の中で効果的だったアプローチ、上司の関わりなどをお伺いできますか。

組織を変えるうえでまず大事なのは、
「自分の思いを言っていい」と感じられる風土をつくることだと思っています。
上司にも“問いかける役割”を求めました。
指示命令ではなく、「あなたはどうしたい?」と聞ける上司が増えると、
社員の “I will” が自然と引き出されるんです。
そうなると、男女や属性で人を見る必要がなくなり、個性で評価される組織に近づいていきます。
一方、女性は自分から手を挙げにくい傾向があります。
だからこそ、上司が「部下のいいところを発揮できるようにサポートする」ことが上司の役割なのです。
部下が成果を上げたら、上司の評価に反映する。
ダイバーシティは会社の“器”そのもの
結局のところ、ダイバーシティは組織風土と人材育成の話で、射程は長い。
短期業績とどうバランスを取るかが鍵です。
ダイバーシティはカルチャーのベースであり、組織風土改革は避けて通れない。
その先に業績やイノベーションが生まれます。
会社にいるあらゆる層をどう活かすか──
これは経営企画と人事が一緒に取り組むべき経営課題だと思っています。

カレイディスト所感

「DE&Iは、会社の器でありカルチャーの土台。」
一人ひとりが活かされ、思いを言える環境づくりそのものです。
それを実現するには、仕掛けが必要。
及川さんの話は、DE&Iの目的や「誰もが活躍できる状態」をどう実現するか、
そしてカルチャーがイノベーションにつながるのか
──その答えが生きた実践の言葉として響いてきました。
次号では、そうした環境づくりが企業の進化にどうつながるかお伝えしていきます。