ダイバーシティの言葉は目に見えやすい特徴のごく一部に着目しがちだけれども、年齢や生活水準、性自認・性的志向や病歴等のように、外面からは捉えづらい側面も含め一人ひとりは異なっており、インターセクショナリティという言葉もあるように女性と言っても複数の特徴が掛け合わさって、女性一人ひとりにもやはり多様性があるということにも理解が必要だと説明しました。
そして、インクルージョンにおいては、一人ひとりが、価値あるものとして扱われ、信頼され、自分らしくあること、心理的安全性を感じられる状態であることが欠かせないと伝えました。
またD&Iの効用は、女性やマイノリティのためだけでなく、組織の構成員全体、また企業の収益貢献にも繋がり、経済・社会全体へのメリットがある一方、D&Iを阻害する要因として、性別に基づく無意識の偏見の影響で女性自身も自分のあり方を狭めていることに気が付くことも肝要であると説明しました。
最後に、女性も男性も自分のポテンシャルを発揮して社会や家庭に貢献し、参画していくことはグローバル共通で追及されている価値観であり、そのベースには、自分らしくあること、心身の健康が欠かせないことを強調しました。
最初のスピーカーである弊社塚原からは、「ダイバーシティのビジネスケースとグローバル潮流」のテーマに、DE&Iの基本的な考え方、ダイバーシティの真の価値は多様性がマネジメントされてこそ発揮されることを説明しました。
DE&Iを推進するベネフィットとして、インクルージョンを感じる組織では構成員の幸せと組織への貢献が高まること、イノベーションを通じた組織業績の向上につながるといった調査結果などが紹介されました。
二番目のスピーカーの坪田氏からは、「米国ビジネススクールの実情に見る、ミレニアル・Z世代のD&I意識のリアルと企業・社会の変化に寄せる期待」と題して、アメリカのMBA学生のD&Iに対する意識の高さ、大学院としての取り組み、学生の企業選択に与える影響について語られました。
MBAではD&Iが関心の高いテーマの一つであり、D&Iの議論ができる場が整備され、D&Iの意識を高めたリーダーの輩出にも繋がっているという現状が説明されました。
ご自身がダートマス大学院の生徒会長に立候補されたご経験から、D&Iへの意識が高い候補者が多く、学内の様々な分断を取り除くことや自分がマイノリティという経験をしているからこそ見える改善提案等を訴えた経験を語られました。
同大学院では、DE&I推進の専門DEAN(学部長)が設置されており、ミッション、アクションプラン、KPIを対外的に公表、フィードバックを得て改善するというサイクルがトップの強いコミットメントで回されていること、また学生が主導するD&Iの取り組みも進んでいる状況が紹介されました。
三番目のスピーカーの丸山氏からは、「エネルギー解決の課題に向け~JERAのダイバーシティ&インクルージョン~」と題して、自社のD&Iの推進策の主要な取り組みについて説明がありました。
JERAは業態特徴としても理工系学部出身者が多く、社員の女性比率が低いことを課題と認識し、積極的に女性の採用活動を行うとともに、意思決定層への女性登用を増やすために数値目標を設定し、計画的に機会を付与する施策を実施していること等について述べられました。
また、大多数を占める男性の行動変化を促すことを目的としたチェンジリーダープログラムを通じて、参加者がマジョリティの特権への気づきを持ったり、グローバル先進事例を踏まえて意識や行動に変化が見られることなどが紹介されました。
最後のスピーカーの田中氏からは、「男性学の視点から誰にとっても生きやすい社会を考える」と題して、D&I推進が置かれた立場によって受ける影響の違い、性別が自分の生き方に与える影響、積極的寛容と消極的寛容の違いについて語られました。
冒頭では「男は仕事、女は家庭 から 男も女も仕事も家庭も」のキャッチフレーズに潜む問題が提起されました。D&I推進のフレーズが、異性間で結婚して子育てしている家庭を前提としており、独身の人、シングル家庭、同性カップル、D&Iに理解のある職場環境で働けない人などの視点は考慮されていないゆえに、社会的に生じる苦痛や格差についても見落としてはいけないことを語られました。
また男性自身の当事者意識の足りなさゆえに、男女の賃金格差から助長される男性の働きすぎ問題や過労死、男性は定年まで働く前提に基づいた「平日昼間問題」のような無意識の偏見の問題が解決しないというご指摘がありました。当事者意識をもつ第一歩として、性別が自分の生き方に与えている影響を考えることの重要性が指摘されました。
11月16日に 日経ウーマンエンパワーメントコンソーシアムが主宰する「G20EMPOWER:女性のリーダーシップとエンパワーメントを加速するアライアンス」の講演を行いました。リアルとオンラインのハイブリッド開催ということで、10社程度15名が会議室にリアル参加、残り30名程度がオンラインから参加されました。
当日は、G20EMPOWERの共同代表である、アキレス美和子さん(SAPジャパン株式会社人事戦略特別顧問)が、「G20 EMPOWERとしての今年の活動状況報告」を、そして塚原が各企業における意思決定層の女性拡大に向けたヒントとして、「G20EMPOWER ジェンダーレンズサーベイ調査結果&実践」について講演しました。途中Q&A、ワーク、最後は座談会も行い、各社からの参加者と積極的な質疑応答や交流もできました。
G20EMPOWERにおいて日本が貢献できたポイントとして、
1.重要なことを見極め最初に手を挙げる、2.フレンドリーで率直かつ粘り強いコミュニケーション、3.信頼できるパートナーと協働、の3点を挙げられ、ジェンダーギャップからみた日本の立ち位置は芳しくないけれども、肩身が狭くてもためらわず、一歩前に出る!という姿勢で臨むことの大切さを伝えて下さいました。また、女性の活躍を国内の業界間での狭い比較でなく、グローバルに自分の置かれている位置を相対化して、考えることの重要性を強調されました。
後半の質疑応答では、「日本の女性に根強くある価値観に企業の努力だけでは難しいので、どうしたらいいのか?」、「ペイギャップが起きる構造について」、「管理職に女性比率を挙げたいが女性が就きたがらないというのは本当か?」など、ジェンダー問題に対する鋭い質問を多数いただきました。アキレスさんと塚原から、無意識の偏見から社会や組織が陥りやすい女性参画を阻む構造と共に、女性をエンパワーし、変革をもたらしていくためのヒントをお伝えしていきました。
最後に、これから日経クロスウーマンの媒体で、各国のDE&Iの取り組みを読み解く連載を現地の担当者からの声も入れながら展開していく予定ですので、どうぞお楽しみにして下さい!
◆日経クロスウーマンの「日経ウーマンエンパワーメントコンソーシアム」G20 EMPOWERイベントリポート
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