2025年3月4日、東京大学において、役員・部局長の方々約40名に参加頂き、「多様性と包摂性への理解深化・定着促進」の研修を行いました。東京大学ではD&Iに関する研修を継続して行っており、カレイディスト代表取締役社長兼CEOの塚原月子が昨年に引き続き講師を担当しました。
冒頭、藤井輝夫総長より、多様性と包摂性は、東京大学のビジョンであるU Tokyo Compassの真ん中にある重要な取り組みであることが述べられました。参加者の皆さまは、職場として、また学びや研究の場として社会にも大きな影響力を持つ東京大学のD&Iの推進やその阻害要因等について、講義に加えてグループ討議や演習などを通じて自らの経験も踏まえながら熱心に向き合ってくださいました。
東京大学HPでも紹介されています。
U Tokyo ダイバーシティ&インクルージョン
東京にて2日間、名古屋1日、大阪1日で開催され、各地で企業のDE&I推進を担当される方々が、計80社より、計123名が参加されました。まず、基調講演では、多くの企業が直面しがちな悩み・課題を念頭に、DE&Iコンサルティングの経験に基づく考え方、成功につながりやすい取り組みプロセス、様々な事例などを取り上げました。その後、参加者による企業横断でのグループディスカッションにリクルート社員の皆さまやカレイディストの塚原・二木も参加させて頂き、更に懇親会ではより突っ込んだ情報交換なども行われ、多くの参加者より大変ご満足のお声をいただきました。
【アメリカの反DEI加速の背景】
アメリカでは第二次トランプ政権の始動後、DEI(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)の取り組みへの逆風が吹き荒れている。2023年の米連邦裁判所によるアファーマティブアクションの違憲判決、トランプ大統領の再就任を背景に、保守派のインフルエンサーからの反DEI攻撃や保守系シンクタンクからの反DEIを掲げた株主提案の影響が強まっている。これにより、民主党下で進んだリベラルなDEIの政策が次々と否定され、アメリカを代表するシリコンバレーのテック企業、大手金融機関、小売業等から次々とDEIポリシー、取り組みの撤回・縮小が発表され、従来とは真逆の方針転換に驚かされる。ようやく日本社会でも高まったDEIの気運、企業が推進してきた女性活躍推進にどう影響をもたらすのか危惧する人も多いのではないだろうか。
現在アメリカで起きているバックラッシュは、トランプ大統領就任以前から兆候はあったとも言える。ピュー・リサーチ・センターの2024年10月の調査によると、アメリカの労働者の「職場におけるDEIの取り組み」に対する否定的な意見が2023年2月調査より増加している。特に共和党支持者からは顕著な反対がみられ、また人種別ではDEIの恩恵を受けていない、不当な剥奪感を感じる白人男性が多いことが読み取れる。アメリカの逆風はDEI推進を「行き過ぎだ」と感じているマジョリティ層の不満が根底にあるようにも思える。
【DEIポリシーを堅持する企業と投資家の反応】
一方で、注目されるのがコストコやアップルのように、反DEIの流れに毅然とした対応をしている企業の動きだ。
例えば、この1月23日に開催されたコストコの年次総会では、同社のDEIプログラムを維持するリスクに関する報告書の提出を求める提案が、株主の98%以上の反対により否決された※1。この株主投票は企業のDEIプログラムに関する投資家の価値観を占う試金石になるとみられていたが、投資家の反DEI決議への支持の低い傾向は今のところ変わっていないように見受けられる。また、アップルの取締役会も多様性ポリシーの継続を宣言している。保守系シンクタンクは、アップルのDEIポリシーを取りやめるべきだという株主提案を提出していたが、アップルの取締役会は株主提案への反対を呼びかけ、2月25日の株主総会でも反対多数で否決された※2。
【日本企業はアメリカの反DEIの潮流にどう立ち向かうべきか?】
では、日本企業はどのようなスタンスをとるべきなのだろうか?
そもそも欧米に比べると日本のDEIの取り組みは緒についたばかりである。女性活躍推進に取り組む企業は多いが、十分な成果をあげているとは言い難く、現にWEFの2024年のジェンダーギャップ指数ランキングの中でも経済部門では、146か国中の日本は120位、アメリカは22位と圧倒的な差がある。成果を得る前に立ち止まる合理性はない。
また日本は人的資本経営やガバナンスの観点での議論を始めたばかりであり、女性やマイノリティを含む全ての人の人権尊重やハラスメントの根絶に基盤を置き、組織能力向上やサステナブルな成長を可能にするDEIの役割がこれから益々重要になっている。
多様性には「分断」につながる要素が内包されている。インクルージョンの伴わない多様性の世界では「分断」が顕在化しやすい。だからこそ、インクルージョンの醸成を重視した制度や組織風土の改革が重要となる。翻って、日本企業はDEIと銘打ちつつも、取り組みの実状はダイバーシティに関するものが中心でインクルージョンの実現に向けた具体的な取り組みができていない企業も多いのではないだろうか。次回はこのような時期だからこそ、その実現に重要な「インクルージョン」について触れていきたいと思う。
出所:※1 - REUTERS ※2 – 日経新聞
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