カレイディスト・ニューズレター 2026年9月号 
「日本では、いまだ「女性限定のリーダー育成」施策が有効か?」

 皆さま、こんにちは。いつもカレイディストのニュースレターをお読みいただき、ありがとうございます。今号からはクオータリーでの発行へとリニューアルいたしました。私たちの問題意識や皆さまに強くお伝えしたい示唆などを選りすぐって、皆さまの経営や実務にお役に立つよう丁寧にお届けしていきたいと思います。

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 「女性のみを対象とする研修や施策のあり方」について、逆差別ではないかという議論がある。特段珍しい、または新しい意見ではない。が、昨今は米国の反DEIも影響してか、やはりそうなのではないかという議論がやや攻勢を強めている。またある人は、いわゆる「女性活躍」ももう10年も(早くから取り組んでいるところでは20年にもなるか)取り組んでいるのだから、そろそろ女性ばかりを対象とする施策から男女共に対象とする取り組みへと「進化」させるべきだと息を巻く。

女性のみを対象とする研修や施策は逆差別なのか?

 「逆差別」を主張する人はしばしば、既存の「性別に関係ない」研修や施策こそが正統であり、それらで十分だと考える。しかし、例えば自社内の「性別に関係なく」設計されたリーダーシップ研修などへの参加者の実情はどうだろうか。女性の参加者はごく少数で、実質的には「男性参加者が中心」の研修になっていないだろうか。

 性別に関係ない(が、実際には男性が多勢を占める)研修で、男性が発言に躊躇することなく気付きを得、人脈を広げるのと同様に、女性が多勢を占める研修機会が自然発生的にあれば良いかもしれない。自然にはなかなかないのであれば、女性にとってより心理的安全性の高い環境で闊達な議論をすることができる機会を意図的に設ける―それは、男性にも女性にも同じような機会を提供するための「公平な」取り組みに過ぎない。

女性活躍は十分進んだのか?

 国際労働機関(ILO)の調査によると、世界の主要国における女性管理職比率は、欧米、アジアでも4割前後を占めるところも多い中、日本は未だ約16%前後と、先進国の中で大きく取り残されているのが現状である。
 長く取り組んできたからもう十分だというのは、あまりに短絡である。また、女性管理職比率がほんの数%高まったことをもって「以前よりはだいぶ良くなった」と言うのであれば、その企業はそもそもあるべき姿を描き切れていなかったのではないか。
 十分かどうかは、組織の中で意思決定に責任を持つ男女の比率が目指す水準に達し、それによって、前例主義や同調圧力が減衰し、組織の未来のために上がる声が活かされる組織になってきているかどうかで判断されるべきだろう。

女性を対象とする研修に取り組む現場から

 女性を対象とする研修を主催し参加企業とやりとりする中で、気づかされることがある。

  1. 研修参加者のノミネート過程自体がマネジメントの気づきになる
     多くの企業のマネジメントが、女性をリーダーシップ研修に参加させようとして「誰が次世代の管理職候補なのか」を可視化できていなかったことに気づく。管理職候補の女性がどこにいるのか、必要な経験を積めているのか、今後どのように育成し、登用していくか、マネジメントや人事と現場が連携して検討するきっかけになる。
  2. 「リーダーシップ」像が上書きされる
    「力強くぐいぐい引っ張る」「弱みが見えづらいオールラウンダー」「24時間365日コミットする」-こうした固定的なリーダーシップ像が、女性の挑戦意欲を阻みがちだ。心理的安全性の高い場で、女性参加者たちは「前例を突き破ってでも自分が実現したいことは何か」「自分が力を尽くすことはもちろんだがそれだけでなく、チームメンバーを鼓舞して、チームの総力で組織を動かせれば良い」といったことを学ぶ。こうした中で、「リーダーシップ」像が上書きされていく。

未来の「男女共通」に向けて今必要な「橋渡し」

 女性を対象とする研修や施策の目的は、女性だけを特別扱いすることではない。本来は、性別にかかわらず誰もが管理職、更には上位の意思決定層/マネジメント層を目指せる環境を実現することにある。
 今の取り組みの先に見据えるのは「手成り」の男女共通施策ではない。例えば、男女参加者50/50で互いに刺激を与えあい、共に挑戦するような男女共通のリーダー育成施策へと進化させていくべきだ。
 依然「女性活躍」の過渡期である日本では、男女共通の育成施策を強化しながらも、同時に女性が挑戦への一歩を踏み出しやすくする機会を設けること。その両輪があってこそ、意思決定層の多様化を通じた組織の進化がより着実に進むのではないだろうか。