対談サマリー:「DEIをめぐる逆風:日本企業へのインサイト」
「DE&Iをめぐる逆風日本企業へのインサイト」の対談サマリー
2025年5月16日にアキレス美知子氏と弊社塚原で「DE&Iをめぐる逆風 日本企業へのインサイト」と題したオンライン対談を実施しました。以下は対談のサマリーです。
まずトランプ政権下で出された大統領令がDE&Iに与えている影響について、行政機関や連邦政府の調達契約におけるDE&I関連プログラムの見直しや制限に直面したアメリカの企業は、1)DE&Iポリシーごと廃止する、2)大幅に縮小する、3)表現をDE&IからBelongingやInclusionへと変更するがDE&Iの本質は継続するなど、いくつかの対応パターンが見られます。
またDE&Iを重要視する大手企業の株主総会で反DE&Iの株主提案がどうなるか注目される中、アップルやディズニーなど、反対多数で存続が決まったケースもあり、株主の意向を踏まえて存続する企業もあります。
次に、米国と日本のDE&Iに対する背景の違いについて、人口構成、労働生産性、人種の多様性などの違いから、DE&Iの重点や課題が異なります。米国ではマジョリティである白人層の一部からの反発や逆差別感情があるなど、人種や民族の多様性が重要課題である一方、日本では少子高齢化による労働力不足が深刻であり、女性活躍推進が進まない現状も踏まえて、企業の成長にはDE&I推進が必然です。
さらに、日本の国際的競争力の凋落、特にビジネス効率性と経営プラクティス(ダイバーシティに関する指標を含む)の評価が低く、全体的なランキングの足を引っ張っています。人材の競争力ランキングの低下も課題として挙げられます。女性活躍推進法が施行されて10年近く経つにも関わらず、あまり改善されていない現状も憂慮されます。
米国の事例を踏まえ、今後日本企業がDE&Iをどのように捉え、どのように対応すべきでしょうか。DE&Iで先行する米国ではより戻しが起きている一方、日本ではまだDE&Iが十分に進んでいないため、まずは今以上の成果を出すことが重要です。加えて、どのような組織をつくりたいのかを議論し、その中にDE&Iがどのように組み込まれるのかを明確に示す良い機会です。
企業が直面する不透明な環境下においてDE&Iを推進するための重要なポイントとして、次の点があげられます。1)論理的な説明やデータに基づいた判断と意思決定、2)テクノロジーを活用した人材管理、透明性の高い評価システムとコミュニケーション、3)SNSでの攻撃や炎上のリスクを考慮し、施策の名称や表現など工夫、そして、4)社長はもちろん経営陣全員がDE&Iの重要性を理解し、信念を持って推進することが不可欠。
最後に、DE&Iは目的ではなく、ありたい姿があってこそ意味を持ちます。アメリカの状況を注視しつつ、日本企業はこの機会を前向きに捉え、持続可能な成長を達成するために、ぶれずにDE&Iを推進していくことを期待します。
