カレイディスト・ニューズレター vol.9 - 2025年12月号-

  皆様、こんにちは。今月もカレイディストのニューズレターをご覧いただき、誠にありがとうございます。気が付けば今年も師走を迎え、慌ただしい毎日が続いていることと思います。皆さまにとって実りある一年であったことを願いつつ、本号をお届けいたします。今月のニュースレターでは、企業のDEIの施策にも少なからず影響を与えるであろう、2025年10月に改正された育児・介護休業法について取り上げていきたいと思います。

《2025年12月のDEIトピックの考察》

法改正による柔軟な働き方の実現に企業が直面しそうな課題と対策 

 育児休業や介護休業を取得する従業員にとって、働きやすい制度は大切な基盤です。しかし本当に組織の力になるのは、その制度を活かし、柔軟な働き方を成果につなげる仕組みです。法改正をきっかけに、組織が意識すべきDEIの視点を一緒に考えていきたいと思います。

①管理職層のバイアスの払拭

 2025年の育児・介護休業法改正により、企業には男性育休の取得促進や、男女がともに育児を担うことを前提とした働き方環境の整備が求められています。男性の育休取得者数は増加傾向である一方、育休が終われば、(女性とは異なり)従来通りの仕事優先が組織からも期待されていないでしょうか。

 柔軟な働き方を活用することが「コミットメントの低さ」と捉えられ、評価に影響する懸念から、実態として使いづらさが残らないように法改正をきっかけとした男性の働き方に関する意識のアップデートが欠かせません。また現場でも男性育休の取得者が増えると共に、従来の業務の属人化の回避やAIも活用した業務効率化なども必要となっていくでしょう。

②女性をマミートラックに押し込まない

 今回の法改正では、妊娠・出産の申出時や、子が3歳になるまでの適切な時期に、企業が従業員の働き方の意向を確認することが求められています。しかし、この意向確認を「配慮」に比重が置かれてしまうと、特に女性の場合、善意に基づく無意識のバイアスから「子育て中だから負荷の高い業務やリーダー職は避けた方が良い」と判断され、結果として成長機会が減り、管理職への挑戦をためらわせる要因になることも考えられます。

 意向確認の際は、本人の適性やキャリアの希望をしっかり聞き、時間や働き方に制約があっても、キャリアの停滞とならないように、その時々で柔軟にやり方を考えて本人が成長できることを一緒に考えることが必要となるでしょう。

③成果基準の評価へ

 法改正の制度導入と同時に、組織として柔軟な働き方が評価に不利に働かないことを明確にすることが法改正を活かしていく上でも重要な施策となるでしょう。多くの企業では柔軟な働き方を選ぶ従業員を公平に評価できる仕組みが未整備で、時間制約のある従業員が昇進で不利になりやすい側面も否めません(※①)。勤務時間に左右されないKPIの設定、短時間勤務者や育休復帰者も「成果」で評価され、評価の透明性を高めることで、個々の従業員の納得感と昇進意欲を高め、組織能力の向上につながるのではないでしょうか。

まとめ

 育児・介護休業法改正は、世代や性別を問わず「働きやすさ」と「生産性向上」を両立させる大きな転機です。制度を活かし、組織の成長へとつなげるためには、管理職のバイアスを払拭する意識改革と、成果に基づいた透明性のある評価が同時に進むことで、より実効性のあるものにつながっていくのではないでしょうか。

参考:
・厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内
・※①関西学院大学 ビジネス&アカウンティングレビュー「時間制約のある従業員の人事制度と人事評価:アンケート調査と先進事例研究より」