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『女性のキャリア形成ー制度は十分?女性のキャリアが直面する見えない壁』
働きやすさから進むキャリア形成の課題
政府の「女性活躍推進法」の後押しもあり、過去10年ほど企業・組織は女性活躍の数値目標を掲げ、出産後も働き続けやすい環境の整備が進み、女性の勤続年数も伸びてはいるものの、女性管理職比率を国際比較すると日本は依然低い水準で留まっている。
女性管理職が増えない理由として、企業・組織からは「女性がリーダーポジションを志向しない」「家庭での役割が優先され、仕事との両立が難しい」「管理職に適性がないという自己評価の低さ」などが挙げられることが多い。しかし、女性の昇進意欲が十分に高まらない背景には、個人の動機や意欲だけではなく、職場環境や組織文化の問題が根底にあることも見逃せないのではないだろうか。
組織的に女性の仕事の経験値を加速させる仕組みの必要性
女性はそもそも男性に比べて、「職場で自分の活躍は期待されていると感じにくく」、「難易度の高い仕事を任される機会が少ない」と感じる傾向がある、という調査結果がある※1(下図)。また同調査では、「自分が任されている業務の重要性」や「仕事上で大きな壁にぶつかった経験」について、女性の方が男性よりも低く感じる傾向があることも分かった。
それらの調査結果からも、女性は男性に比べて先を見据えた期待を伝えられていないことや、ホットジョブ(ビジネスに影響力のある重要な仕事)を任される機会が比較的少なく、職場での期待を理解しながら経験を積み、自信を備えていく機会が十分に得られていない可能性もある。
この背景には、職場の文化や上司による無意識のバイアス(ライフイベントが重なったら女性には難しいだろう、業界的に女性には向いていない等)が影響している可能性も考えられ、結果的に女性の仕事における期待感や自信のなさに影響を与えていることが推察される。
海外の研究では、リーダーシップ開発に必要な経験として、いわゆる「70/20/10モデル」が提唱されている※2。この理論によれば、リーダーシップ開発には、70%が重要な業務経験(ホットジョブ)、20%が重要な人的ネットワーク、10%がトレーニングや学びの機会から成り立つとされている。
キャリア形成において、依然として存在する男女間の格差を埋めるためには、女性の経験を加速化させるリーダーシップ開発やスポンサーシップ、人とのつながりを強化する仕掛けづくりが大切だ。日本の企業・組織には、女性が主体的に挑戦し、キャリアを切り拓く力を高める後押しが求められているのではないだろうか。
※1出所:2020年の全国ダイバーシティネットワーク調査
※2出所:Women Get Fewer Game-Changing Leadership Role by Christine Silva and Herminia Ibarra (HBR 2012)