国際女性デーに寄せて
2024年の国際女性デーのテーマは#InspireInclusion。
あらゆる差別が撤廃され、ジェンダーに基づく固定観念や偏見が払しょくされ、女性をはじめ全ての個人が尊重され、自分らしく人生を楽しみ、社会や職場で活躍・貢献できる世界が見たい。そんな世界のベースにあるのがインクルージョン(包摂)です。
随分前の個人的な経験ですが、30代前半でニューヨークに長期出張していた時のこと。
英語に自信がなく、クライアントとの議論の前面に出るのをためらいがちだった私を横目に、当時のアメリカ人上司がクライアントに対して言ってくれた言葉は、「彼女は、日本での仕事が認められて、当面ニューヨークで仕事をすることになったこの分野のプロフェッショナルです。文化的な背景や言語面でたどたどしいことがあるかもしれませんが、お客様の役に立つのに十分な知識や能力を持っていますので信頼してください。」というものでした。この言葉は、私のモチベーションを高め、クライアントの胸襟を開きました。奇しくも、担当していたのは、クライアント企業の営業人材の能力開発とダイバーシティをテーマとするプロジェクトでした。
インクルージョンは、「価値があると認められること」「信頼されていると感じられること」「自分らしくいられること」「寛容さが感じられること」「挑戦できること」の5つの状態があるときに成立するということが調査からわかっています*。私のニューヨーク時代の上司は、自社及びクライアント双方のチームの中で私にこの5つの状態を提供してくれました。それはまさに「インクルーシブ・リーダーシップ」だったと思います。
#InspireInclusionについて考えることをきっかけに、一人一人がインクルージョンを醸成するちょっとした行動を取るだけでも、そのインパクトは計り知れないものになると思います。
塚原月子
*Dnika J. Travis, Emily Shaffer, and Jennifer Thorpe-Moscon, Getting Real About Inclusive Leadership: Why Change Starts With You (Catalyst, 2019).