カレイディスト・ニューズレター 2026年2月号-
『いま企業に問われている採用体験は、DEIが貫かれた体験設計』

 新卒採用の面接が本格化し、中途採用も含め多くの企業が「人と向き合う」機会の多い季節を迎えています。その出会いのプロセスは、候補者にとってどのような体験になっているでしょうか。新卒・中途を問わず、人材の採用や定着を考えるうえで欠かせないDEIの観点について、本号で考えるヒントになれば幸いです。

なぜいま「採用体験」がここまで語られるのか

 近年、人事領域では「採用体験(Candidate Experience)」への関心が一段と高まっている。候補者が企業を主体的に選ぶようになり、SNSや口コミによって企業文化が可視化されたことで、入社後のギャップによる早期離職や、採用メッセージと実際のカルチャーの不一致がブランドリスクにつながるケースも増えてきた。こうした状況を踏まえると、採用はもはや“入社まで”のプロセスではなく、オンボーディングから配属、評価、キャリア支援、エンゲージメント、そして活躍まで続く「従業員体験(Employee Experience)」の一部として捉えることが求められている。

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入社後ギャップはよくある問題 

 さまざまな調査を見ても、入社後ギャップによる早期退職問題への関心は高まっている。複数の入社後の意識調査では、転職して6~7割の人が入社後に「思っていた職場と違う」と感じており、その背景には企業風土やカルチャー、職場の雰囲気といった「働く環境そのもの」が期待とずれやすいという傾向がある。実際、退職理由として企業文化を挙げる人は6割程度と少なくなく、入社前に知りたかった情報としても、社内の人間関係や人事データ、評価制度の運用といった内部のリアルが上位に並ぶ。また、若手層では職場の雰囲気や仕事内容のギャップが転職検討のきっかけになりやすいという結果も出ている。こうしたギャップの多くは、組織カルチャーの土台にDEIの視点が十分に根づいていないことも一因として表れやすく、入社後にその不足を職場内で感じ取っているのではないだろうか。

新卒者のDEI推進企業への志望度は高まっている
さらに、新卒採用の現場でも「カルチャーの実態」を重視する傾向は高まっているようだ。最近の学生調査では、企業がDEIをどのように捉え、実際に推進しているかによって志望度が上がると答える学生が6割を超えており、「多様性を掲げているか」よりも

「働き方の多様性」や「性別などに関係なく実力で評価される環境」などが組織の行動文化として根付いているかも判断基準になりつつあるようだ。

採用時の好印象だけでは、もはや通用しない

 こうした流れを受けて、企業は採用段階で働き方の柔軟性や多様性を示すだけでは足りなくなっている。候補者や社員が重視しているのは、「入社後もDEIの価値観が一貫して体験できるか」であり、オンボーディングでの心理的安全性、仕事の付与の公平性、評価の透明性、キャリア支援の偏りの有無、インクルーシブなマネジメント、日常のコミュニケーションにある尊重といった、日々の経験そのものだ。

 企業が本当に問われているのは、これらすべてのプロセスにDEIが根づいているかどうかである。採用メッセージと実態が一致してこそ、「この会社は本当にDEIを大切にしている」という信頼が生まれ、早期離職の抑制やエンゲージメント向上、個人と組織の成長にもつながっていく。これからは、DEIを軸にした一貫性のある採用体験が、組織の競争力を左右していきそうだ。

出典:

  • Unipos「就職と企業風土・カルチャーに関する実態調査」
  • en-japan 20代・30代のビジネスパーソン900人に聞いた「入社後ギャップ」調査
  • HR Pro 「2027年3月卒業(修了)予定の大学生・大学院生(以下、27卒生)を対象に実施した「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」に関するアンケートの結果」