カレイディスト・ニューズレター 2026年4月号
 -後編「DEIは未来の企業価値向上にどうつながるか」-

先月に続き、特集「インクルージョンのその先へ──組織が変わるヒント」の後編をお届けします。
ポーラ前社長・及川美紀さんとの対談から、DEIがこれからの企業価値にどんな可能性をもたらすのかを探ります。
◇3月号 「前編:ダイバーシティが導く人材育成とカルチャー変革」
◇4月号 「後編:DEIは未来に企業価値向上にどうつながるか」

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Q:カレイディストでは、DEIと評価の公平性・透明性は一体だと考えています。及川さんご自身はこの点どういうスタンスでやってこられましたか。

自身の経験としても、評価は毎年見直すという“継続”を大事にしてきました。
評価も一人の上司だけでは決めない。
課長同士、関連部門、時には非関連の部長まで入って、
「本当にこの人が昇格すべきか」を複眼で確認すること。
評価の透明性とダイバーシティを連動させることが重要なんです。
数字だけを見るのか、その裏にある改革や改善を見るのか──
これは上司の力量が問われますし、360度評価にも反映されます。
最終的には、経営ボードがどんな評価を良しとするのかが組織の方向性を決めます。

Q:DEIの議論をしていると、今とは非連続な未来のありたい姿を描き切れていないという壁にぶつことが多いのですが?

DEIは数値目標が先走りがちだけれども、
「闊達な意見とは何か」「今の状態と何が違うのか」まで言語化し、
解像度の高い未来像”を経営と現場で握ることが大事です。
そうすると、上からのメッセージと現場の動きがアラインし、社風そのものが変わっていきます。
女性役員も1〜2人では影響が出ません。25%くらい入って初めて組織が変わる。
役職がなくても意見を言える場をつくり、
一見いろんな意見を言っているように見えても空気を読んで「求められる正解」を言っていて「本音」を言っていない、という状態から抜け出す必要があります。
組織は放っておくと元に戻るので、深化・進化を求め続けることが欠かせません。
なので、理念を実現するには社員の行動を仕組み化することが必要なんですね。
それは中期経営計画の中にもDEIを入れこみ、人材戦略を経営戦略のベースにする。
結局のところ、
全員がやる気を出せるプラットフォームがあるかどうかが鍵です。
“野心のある人だけが伸びる”ではなく、
全員が活躍できる環境をつくることが、これからの企業の競争力だと思っています。

Nl march 4

Q:インクルージョンって融和的なイメージだけで捉えられがちですが、難しい議論もフラットに重ねて切り拓いていく行動こそがインクルーシブリーダーだと思っています。

昭和型の“エリート探し”のリーダーシップのままでは、
能力を発揮できる人とそうでない人の二層構造が生まれてしまいます。
これから必要なのは、全ての人の力を引き出すインクルーシブなリーダーシップです。
そのためには、経験者や成果を出している人たちだけが声を大きく議論するのではなく、
経験のない人も、新参者も、部外者も
「ちょっといいですか?」と素朴な疑問を投げかけられる空気が必要です。
会議の発言順や席順まで固定されているような“内向きな雰囲気”をどう崩すか。
階層の壁は厚いので、経営層・リーダー層・一般社員の三層すべてに働きかけ、
一気通貫でアクションを起こすことが欠かせません。
もちろん、指示命令系統は組織として必要ですが、
それだけでは未来の企業価値はつくれません。
社長や人事担当役員はDEIを語る機会があっても、事業担当や、製造部門などの役員、
取締役が語る機会がないと「自分事」にはなりにくい。
だからこそ、人的資本やDEIについて“答えのない話”をフラットに議論する場が必要なんです。
10年後の会社を想像し、AIが進んだ世界でどんな人材が必要なのか──
人づくりを10年スパンで考える視点が欠かせません。
前職でも10年後を想像するワークショップをやりました。
販売・製造など部門ごとに未来の姿を描き、
そこから逆算すると「ダイバーシティをやらないと未来がつくれない」と気づく。
ブランドとしてどう見られたいか、どんな顧客に選ばれたいか──
そこからDEIの必然性が見えてきます

多くの企業はオーナー社長ではなく、
5〜6年の任期でレガシーを残さなければならない社長がほとんど。
その中で最も成果が出やすいのは、私はやはりダイバーシティだと思っています。
組織の土壌を変えれば、未来の企業価値は確実に変わるからです。

カレイディスト所感

2回にわたる及川さんとの対談で一貫していたのは、
DEIは誰もが持てる力を最大限に発揮できる組織風土」を構築することで
「企業の持続的な成長へとつなげる」こと。
それを叶えるためには、評価の透明性を高め、経営が目指すべきビジョンを解像度高く明らかにし、
インクルーシブなリーダーシップで一人ひとりのポテンシャルを引き出しつつ、
出された視点や意見を組織としてより高い次元に組み上げていく仕組みが欠かせない。
だからこそ、DEIは組織文化の問題にとどまらず、
経営が正面から向き合うべき重要な経営課題なのではないでしょうか。